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田んぼを湖沼のようにしたいイトミミズ

湖沼

稲は挺水植物の仲間です。挺水植物とは「浅水に生活し、根は水底に存在し、茎、葉を高く水上に伸ばす植物」で、イネ科ではマコモ、アシ、カヤ、ガマなどです。湖沼には耕したり、肥料を蒔かなくてもこれらの挺水植物がすごい勢いで繁茂しています。我が家では年間を通じて、田んぼをできるだけ湖沼に近い状態に近づける為、刈り取り後、耕起せず、稲株の残る田んぼに水を入れ、会社勤めの行き帰りに毎日、田んぼを見回り、水管理をしています。冬期湛水をおこなうと、田の草の種があっても酸素不足や寒さで発芽しにくくなったり、イトミミズを中心とした微生物の働きにより、土壌が肥沃化します。肥料は収穫後、秋に微生物の餌として少し散布するのみです。しかし、田植えした稲の苗はすぐに活着し、野性的にたくましく成長します。稲に心地よい安定した湖沼になると考えています。田んぼはイトミミズ、ミジンコ、ヤゴ、カエル、藻類などが共生する巨大なビオトープ 「野生の生きもののすみか」にもなります。

田んぼで見られる雑草の移り代わり

無農薬栽培初年度 何も知識がないまま、それまで使っていた除草剤をやめたところ、最初に大発生したのが湿性雑草イネの背丈ほどになる ホソバヒメミソハギでした。背丈は稲ほどあり、そのすごさに圧倒されてしまいまいました。小さいうちに除草機で制圧すればよかったのですが、手遅れで、写真のような状態でした。 ホソバヒメミソハギホソバヒメミソハギ

冬期湛水初年度にはホソバヒメミソハギ、ヒエなどの発芽に酸素を必要とする「湿生雑草」は劇的に減り、冬期湛水2年目では皆無にすることができました。おそらく、冬中、田んぼに水を溜めることで、これらの種は窒息して、死んでしまったのだと思います。それは私にとってとても感動的な出来事で、冬期湛水の魅力に引きつけられていきました。

2年目には新たな雑草に悩まされました。 コナギという「水生雑草」です。水生雑草は発芽に酸素を必要としない為、冬期湛水しても、ほとんど効果がありませんでした。コナギ稲の栄養となるチッソをガンガン吸収する性質があります。背丈こそ、地面にへばりつくように低いのですが、稲がコナギに囲まれると、稲の生育が止まり、葉色が黄化しチッソ切れの様相を呈してきます。それは悲惨なものでした。下の写真がその時の田んぼの様子です。

3年目でようやく除草機による除草のタイミングが身に付き、遅くても下の写真ぐらいのうちに除草することで、力ずくで抑えてきました。無農薬栽培の田んぼの作付け面積を多くするほどにこのやっかいな「水生雑草」の除草に追われ、疲れ果てていました。除草機を使った無農薬栽培に限界を感じていました。その後、数年の試行錯誤でこの水生雑草は深水管理と藻による遮光効果により、抑えることができるようになりました。
コナギの芽生え除草機で浮いた幼いコナギオリンパスμTOUGHカメラで水中撮影  除草機で浮き上がった雑草

わら一本の革命

冬期湛水直後

右の写真は刈り取りが終わった後の稲株の残る田んぼに晩秋、入水し、冬期湛水を始めた直後の様子です。将来、肥料になる稲藁が全面に散らばり地表を埋め尽くしています。

下の写真は冬期湛水を始めて3ヶ月半経過した2月末の田面の様子です。

冬期湛水2月末 冬期湛水で稲株に絡みつく藻

 稲藁は分解・沈殿し、トロトロ層(イトミミズの糞)らしき薄い堆積物が載っています。もっと近づいて、見てみると、稲株や稲藁には藻が絡みついているのがわかります。ここ信州の伊那谷は冬の寒さが厳しく、-10℃くらいまでは気温が下がります。冬期湛水の田んぼも氷で覆われることがしばしばあります。暖かい地方での冬期湛水ほど水中での生物の働きは活発ではないかもしれませんが、沼地で落ち葉が沼底に堆積・腐葉土化していくような自然の営みが見られることは確かです。

 3月から4月になり暖かくなってくると、冬期湛水田の様子はどんどん変化します。下の2枚写真は田んぼ一面、稲藁で覆われた田んぼと稲藁をほとんど持ち出してしまった田んぼの4月頃の様子です。不耕起の田んぼでの冬期湛水では前年度の稲藁がイトミミズの棲みかとなり繁殖し、厚いトロトロ層を堆積するのだと思います。田んぼ一面稲藁だった田んぼでは完全に稲藁がトロトロ層に覆われています。稲藁をほとんど残していなかった田んぼでも前年、田んぼに残しておいた藁束の上だけは特に厚いトロトロ層の堆積があり、藁束が隠れ始めていました。

冬期湛水田-1

冬期湛水田-2

2010年新たな段階へ

 例年12月中旬〜下旬に入水し、冬期湛水していましたが、2009年は収穫後、11月中旬には入水し、冬期湛水を始めました。2010年4月初めに田んぼから水を抜いてみたところ、今まで経験したことのないようなトロトロ層(イトミミズの糞)の堆積があり、秋に田んぼ一面を覆っていた稲藁が見事に埋まっていました。ついにやったあ〜。見事な自然の肥料を作るヒントを見つけたと思いました。トロトロ層の表面にはミミズの穴が見られました。トロトロ層をめくってみると、ミミズがいました。無肥料栽培への手ごたえを感じた瞬間でした。

稲藁の上に堆積したトロトロ層トロトロ層断面 田んぼ一面を覆っているトロトロ層田んぼ一面のトロトロ層
トロトロ層のミミズ穴ミミズ穴 まさに「わら一本」の革命ですわら一本の革命

下の写真はトロトロ層の下にいるイトミミズです

イトミミズ
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